今月の1曲(5月)

LP版(ピッチが高くなっております。ご了承ください)
CD版の音源です。ぜひ比べてみてください!

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今月の1曲解説

作曲:メンデルスゾーン
作品:〈真夏の夜の夢〉より序曲の抜粋
演奏:ロンドン交響楽団
指揮:ペーター・マーク
録音:1957年 ロンドンでの録音
YouTube上でLP版を個人的にダビングしたと思われる音源を使用しました。ピッチが少し高くなっていますが、取り込む際に使用している機械の影響だと思われます。ご了承ください。

選曲にあたり

これまで「ウィーンの伝統のある響き」を感じ取っていただく録音を取り上げてきましたが、本録音の響き自体はウィーンの伝統のある響きを追求しているというわけではありません。今回特筆したいこと点は、音楽上の言葉(アインハイト)の作り方、フレージングを明快にすること、ハーモニー・形式との関係によるアゴーギクやテンポの設定が絶妙であること。これほど「絶妙な」演奏は、100万枚に1枚あるかどうか。このような観点のもと選曲しました。録音は1957年のもので、後の年代(1960年代の後)における、録音技術上の出来るだけのインテンポを求める時代に入る前の状態とお考えください。

 さて、響きはウィーンのものではないと言いましたが、色々なものが調和しているいい例です。この時期のロンドン交響楽団のテクニック上、アンサンブル上のレベルは決して良いものではありません。しかしながら、指揮者の統一という面においてトップクラスの演奏であると思います。あの時代の巨匠たちが追い求めていたもの。ある意味でフルトヴェングラーやチェリビダッケ、そしてクライバーらの全てのものが調和して出来上がったものの1つの例であると考えられます。

 音律をテーマとしたZoom会議でアナログ録音のことについて触れました。ダビング技術や再生環境の問題はありますが、雰囲気はこちらの方がいいと思います。1957年といえば、ステレオ録音が始まってすぐの時代です。そのような当時の最新鋭の技術と、それに対する熱心さとこだわりが感じられる一枚です。現在の録音は、今ある技術に対し、ただ単にベタ録音をしているだけと言えます。当時の録音技術や、録音へ向けてクオリティを追求していた時代との違いを感じ取っていただければと思います。

なおこの当時ペーター・マークは30代後半で将来を嘱望されていた新進気鋭の指揮者でありながらレコード会社とのトラブルでこの業界から干されてしまいます。フルトヴェングラー、チェリビダッケ、アンセルメより影響を受けた逸材がそれ以上に成らなかった残念な才能でした。

コメント欄 / クイズ(作品、演奏団体、収録年月、さらに演奏を良くするためには??)にご参加ください

今月の1曲(5月)」への4件のフィードバック

  1. メンデルスゾーンの『真夏の夜の夢』序曲、先日、調判定・和声分析と形式分析を書き込んだので、先ずはスコア無しで聴いていたら、一緒に聴いていた妻が『アドレナリン出っぱなし!』と言ってドキッとしました(私自身の大きな欠点と思っているので)。
    同時に思い出したのが、湯浅先生の『ローマの謝肉祭』序曲のレッスンで、その時私は振らなかったのですがテンポの早い作品で微細なアゴーギグを使ってフレーズの句読点を作る事の難しさを痛感した事です。

    今日はこのお題の(私には熱演だけど直線的に聴こえる)演奏の第1主題呈示部を聴きながらウィーンの伝統的なスタイルではどうなるか、の予想を立ててから、
    続けてクレメンス・クラウス指揮ウィーン交響楽団と、ウィーン・フィルとモントゥー指揮とティーレマン指揮のYouTubeを聴きました。

    それは置いておいて、最初に気になったのは序奏の3つ目の和音がうまく共鳴しておらず、せっかくの準4度の弱進行の【不思議ちゃん】的表現がなされておらず、恐らく原因はFagottiとCornoによる完全音程の倍音による支えが不充分なためではないかと感じました。ここを調整するとこの表現が良くなる第一歩になるように思います。

    フレーズの句読点については、16小節前と24小節前の半終止前をpochissimo diminuendoにしたり、32小節前と49小節前の完全終止前のVioleのpizz.を
    pochissimo diminuendo、
    39小節前と56小節前の完全終止でちょこっとテンポを緩めたり音色を翳らせたりしながら
    pochissimo diminuendoにすると、完全終止の句点(。)と半終止の読点(、)があってフレーズが分かりやすく聴こえるように思いました。

  2. 録音が古く、ピッチが高いですが、異論のない素晴らしい演奏だと思います。若干、木管のハーモニーがたまに不安定ですね。最初のフルートのヴィブラートをもっと控えめにしてもらって、、4小節目2ndFgのG♯が第3音として低めに取り過ぎかな。130小節目のクラリネットが低く聴こえるので、息のスピードは早めではあるが吹き込み過ぎないように、、あとは、最後の643小節からのハーモニーで各パートにブレスの位置をもっと計画的に決めて、特に前半を速くしない様にしたいです。
    ところで皆さんは、ロバの鳴き声を実際に聞いたことはありますか?
    昔は牛や馬が飼えない貧しい農家では、貴重な労働力としてロバを酷使していたんですよね。(知らんけど)
    私が留学時代、チュニジア・アルジェリアを1人旅した時に、突然異様に哀しい鳴き声を耳にしびっくりしました。
    https://youtu.be/zDAhpMiJW20
    (特に年寄りのロバの鳴き声)
    この曲にもこの鳴き声が出てきますよね。
    サン=サーンスの動物の謝肉祭の「耳の長い登場人物」
    グローフェのグランドキャニオン「山道を行く」https://youtu.be/xObay5x9Lwc
    こちらはとても音楽的ですが、これも表していますよね?
    シューベルトの弦楽四重奏曲第10番第2楽章https://youtu.be/P-Rg7iP56Rw (10:30から)
    他にも沢山該当する楽曲があると思います。
    ベートーヴェンやシューベルトの時代のウィーンの農家から良く聞こえていたと想像します。
    今回の録音は、ペーター・マーク指揮 ロンドン交響楽団 1957年ですよね?

  3. 湯浅先生、どんどん毎月の一曲のお題が難しくなってきているよ!僕は「どうすればもっとよくなるか」は思いつかなかったよ。でも、冒頭のフルートの重音の音が、ディズニー映画の夜明けのワンシーンみたいで、(僕はディズニーは大好きなんだけど)、トップがピャーって発音して聴こえて詩的さが足りない気がしたんだ。想像が広がらないんだよ。昔の録音だから、そう聴こえるのかなあ?

  4. 贅肉や傲慢さのない集中力の高い演奏で、初めに聴いたときはスピーカーから離れられませんでした。こんなに精密なアンサンブルができるのですね。何度聴いても新鮮に聴こえます。

    ●更に良くするには?
    Tempo Iに戻ったところ(6:04)2音目のCl.の音程と、3音目のCor.の音程が高く聴こえました。
    その後弦楽器の刻みが続き、Fl.が四分音符で入る箇所(6:59)で、弦楽器に対して少し瞬発力が鈍く遅れているので、四分休符を休みすぎないように刻みを体に入れて。

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